【映画のご紹介】野球少女

先週末(3/5)から日本で公開されている『野球少女』という韓国映画をご存知でしょうか。これ、オススメです。

韓国では1996年から規定上は女性もプロ野球選手になることができるようになっています。日本でも規定上は同様に可能ですが、日韓ともに現実には女性のプロ野球選手はまだいません。日本の高校野球は男子しか出場できませんが、韓国では1999年にアン・ヒャンミという女子選手が登板した例があるのだそうです。(※参照)

(※)女子高生がプロを目指す映画『野球少女』公開 韓国には男子と一緒にプレーの女子投手が実在した?(室井昌也)
https://news.yahoo.co.jp/byline/muroimasaya/20210306-00225861/

この映画の主人公チュ・スインは、それから20年ぶりに誕生した女子の野球部員ということで話題になった卒業間際の高校生、という役柄です。本人は投手としてプロを目指していますが、リトルリーグ時代からのチームメイト(もちろん男子)がプロから指名されるというつらい現実に直面します。
プロチームは性別の壁を理由にしているとしか思えない態度でスインにトライアウトを受けるチャンスを与えてくれませんが、スインの球速は130キロ台とプロになるにはやや凡庸な資質であり、仮に受けられたとしても合格はあまり望めない状況です。
しかし、スインはまったく諦める気なく練習漬けの毎日を過ごしています。勉強は苦手な上に家庭の経済状況も芳しくなく(父親は失業中)進学も望めない状況で母親はスインに現実を見ろと就職を迫ります。そんなときにプロを諦めた経験を持つ新任コーチのジンテが現れ物語は進んでいきます。

この作品は見たとおり性差は大きなテーマとなっていますが、それは象徴的な要素の一つであって、チャレンジする舞台になかなか立てない(もしくは立てなかった)現実を生きる人々がこの作品には多く登場し、もがき苦しむ様が描かれています。その中で無理かもしれない目標に愚直にひたむきに向かう主人公スインの姿が対比として見ている我々に何かを感じさせてくれます。
コーチのアドバイスもあってスインは自身の球速の壁を打ち破る秘策を講じプロの道へ一歩前進できますが、その先でまた同じ壁にぶつかりある妥協を迫られます。そのときにスインが野球の本質とも言える自説を述べるのですが、これは我々がこの世界で勝負していく上での真理なのでは、と感じさせてくれます。若いかたがたにも見て欲しいですが、中年(男女問わず)に刺さりますね、これは。
主人公スインを演じるのは、ドラマ『梨泰院クラス』で主人公が営む居酒屋のトランスジェンダーのスタッフを演じていたイ・ジュヨンで、私は一気にファンになってしまいました(遅ればせながら、今さら『梨泰院クラス』を見ています)。
こんな社会状況ですが、なんとかディスタンスを保ちながらぜひ劇場でご覧になっていただきたい作品です。

映画『野球少女』公式サイト
https://longride.jp/baseballgirl/