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餃子日本一と家計調査③(宇都宮・浜松激闘編)

前回は家計調査の調査方法からみる都市別の餃子支出額ランキングのレギュレーションの妙について書きました。今回はいよいよ宇都宮と浜松の激闘の軌跡を見てみましょう。まずは開幕の2008年。

2008年
1位 宇都宮市 4,706(0.51%)
2位 浜松市  3,665(0.40%)
ーー 全国平均 1,837(0.20%)
※カッコ内は全食品の支出に対する餃子の割合

初対決は王者が実力を見せつけました。千円以上の差は圧勝と言っていいでしょう。まだ浜松市民には餃子対決熱と家計調査のレギュレーションの理解が浸透していなかったのかもしれません。これで浜松市民の気持ちに火がつくかどうか。翌年の結果次第で浜松餃子学会の威信に関わってきます。2009年はどうなったのでしょうか。

2009年
1位 宇都宮市 4,187(0.46%)
2位 浜松市  4,137(0.45%)
ーー 全国平均 2,055(0.23%)

50円差の大接戦で宇都宮市が日本一を死守しました。生じうる誤差を考えればどちらが勝ってもおかしくなかったと言えます。浜松市民もコツをつかみ、対決熱も浸透したのかもしれません。2010年がいよいよ本気の対決になるのではと期待が持たれます。

2010年
1位 宇都宮市 6,133(0.63%)
2位 浜松市  4,754(0.54%)
ーー 全国平均 2,119(0.24%)

浜松市は今度こそはと自己最高額を叩き出しましたが、昨年の結果に危機感を覚えたのか宇都宮市も同じく自己最高額で挑戦者を圧倒しました。それにしても6千円超というのは全国平均の3倍近くの額でちょっと異常な感じもします。外れ値とまでは言えませんが、この振れ幅には長年の王者の激しい熱意を感じずにはいられません。この闘いはこれからどこまでエスカレートしていくのだろうか、という懸念を感じさせた2010年でしたが、この発表(2011年2月)の1か月後、餃子どころではない事態が発生します。

2011年
1位 浜松市  4,313(0.48%)
2位 宇都宮市 3,737(0.42%)
ーー 全国平均 2,181(0.25%)

言うまでもなく2011年は東日本大震災の年であり、東北に隣接する栃木県は少なからぬ影響を受けました。特に3月の購入額は激減したようです。初の王者となった浜松市ですが、浜松市長は震災の影響を指摘し、両市で「日本のギョーザ文化をリードしていきたい」とエールを送っています。

これ以降、宇都宮・浜松の餃子対決は両市の一騎打ちによる勝ち負けが繰り返されます。2012年から2020年までの星取表は以下のとおりです。

年  1位       2位
2012 浜松市 (4,669) 宇都宮市(4,364)
2013 宇都宮市(4,921) 浜松市 (4,155)
2014 浜松市 (4,361) 宇都宮市(4,190)
2015 浜松市 (4,646) 宇都宮市(3,981)
2016 浜松市 (4,819) 宇都宮市(4,650)
2017 宇都宮市(4,259) 浜松市 (3,580)
2018 浜松市 (3,501) 宇都宮市(3,241)
2019 宇都宮市(4,358) 浜松市 (3,504)
2020 浜松市 (3,765) 宇都宮市(3,694)

この間、両市は餃子の街としての活動を積極的に行いつつ、双方で家計調査の首位奪還(もしくは維持)のための活動にも熱心でした。前々回書きましたとおり、この調査結果は餃子の街としての優劣を示す客観的な数値ではありません。しかし、ここで得られる日本一の称号は話題喚起に欠かせないものになってしまっていたことも前回書きました。
我々外野は毎年の発表を面白がって見ていた反面、当の市民は外食で餃子を楽しんだ帰りになおスーパーでも餃子を買い求めているのではないかと想像すると、一体何と闘っているのだろうか、と無責任ながら心配もしてしまいます。
何十万世帯(宇都宮21万、浜松34万)の中の各96世帯の動向如何で決まる数字ではありますが、この96世帯の支出を押し上げるためには、全市的なムーブメントがないと結果は出せません。一地域の傾向を知る調査世帯数として十分なサンプルとは言い難いものはありますが、標本調査でも全数調査でも、やるべきことは同じなのです。

長年の激闘の末、さすがに自己最高記録を目指すような姿勢は統計からは見受けれられなくなります。しかし両市の餃子の街としての知名度は上がり、家計調査の数字は受け止めつつも、双方ブランド力の維持拡大の方に目が向くようになって行きます。2017年に宇都宮市は3年ぶりに日本一に返り咲きますが、その際宇都宮市長は「順位に一喜一憂するものではないが、市民と積み重ねてきたまちづくりのたまものだ。引き続き、ギョーザを核とした観光振興を推進していきたい」と語っています。

コロナ禍に入り、宇都宮と浜松は闘いから共存関係へと変わって行くかに見えた矢先、新たな挑戦者が現れ、餃子日本一の争いは新展開を迎えることになります。
つづく