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ラーメン日本一の都市が強いこれだけの理由

今年2月に2024年総務省家計調査都市別支出の速報が出た際に、本ブログでシリーズ化していた餃子(宇都宮・浜松・宮崎)からラーメン日本一の山形市に注目度が高まっていることについて前回触れました。
2月の段階では速報値でしたが、既に詳細データは発表済みですので、遅くなりましたが、山形市がいかに突出した日本一であるかについて数字から探っていきたいと思います。

これまで観察してきた餃子は家計支出の中の調理食品分野に属するものでしたが、ラーメンは外食の支出に関する調査となります。家計調査における外食は「日本そば・うどん」「中華そば」「他の麺類外食」「すし」「和食」「中華食」「洋食」「焼肉」「ハンバーガー」「他の主食的外食」「喫茶代」「飲酒代」「学校給食」の13種に分類されています。最後の「学校給食」という分類に違和感を覚える方もいるかと思われますが、実はこれが少しくせ者ですので先に触れておきたいと思います。

たしかに給食費は家計支出の一部ですし、敢えて分類するなら外食にはなります。しかし、子供を持つ世帯には好き嫌い関係なく確実に発生する支出であると同時にその費用は(公立学校においては)自治体が決めるものであって地域性は出ても各世帯の支出傾向を必ずしも反映する訳ではありません。
24年の「学校給食」の全国平均は7,606円で全外食費用の4.05%に相当します。平均としてはこんなものか、という印象を受けるかもしれませんが、この都市別調査で極端に少ない都市が二つあります。1位が和歌山市の272円、2位が東京都区部の521円です。ピンとくる方もいらっしゃるかもしれませんが、これら2都市は24年から給食費無償化を始めており、この数字はその成果を示しています。
対してベスト(むしろワーストか?)ワンはなんとこれから話題にする山形市(17,422円)です。しかし、山形市は25年4月から部分的に給食費を無償化するなどの対応をしており、全国の他の都市や県でもこの動きが広がっており25年の家計調査「学校給食」の支出額は大きく変化することが予想されます。さらに26年度より全国で給食費を支援する予算が組まれることが発表されており、今後「学校給食」項目の位置付けは変わってくるかもしれません。

話をラーメンに戻しましょう。改めて24年の総務省家計調査外食の都市別支出でラーメン(中華そば)のベスト3は、
1位 山形市 22,389円(前年比+4,796円、127%)
2位 新潟市 16,292円(前年比+1,068円、107%)
3位 仙台市 15,534円(前年比+2,460円、118%)
となりました。2位に6千円以上の差をつけての3連覇です。

伸び率に関して昨今の物価上昇を加味して比較しますと、各都市の外食総支出の前年比は、山形市113%、新潟市101%、仙台市118%ですので、24年の山形市は明らかにラーメンに傾注していることが伺えます。24年外食費のラーメンに占める割合は、山形市12.05%、新潟市11.55%、仙台市8.23%(全国平均4.62%)となっており、上位2都市は他を圧倒しています。
山形・新潟市民のラーメンへの偏愛ぶりにはそれぞれ特徴があります。まず外食の総費用を比較してみると、山形市は52都市中21位(185,760円)に対して新潟市は49位(141,110円)となっています(全国平均187,598円)。新潟市の給食費がワースト1位の山形市より1万円以上安い(6,598円)としても、少なめの外食費から捻出されるラーメンへの傾注度は山形市に負けないものがあります。

家計調査支出の外食の項目を改めて見直してみると、食が多様化している現代において極めて昭和的な分類という印象を受けます。元々外食分野は概ねひとまとめだったものが「めん類外食」と「その他の主食外食」に二分され(1961年)、1970年に「日本そば」「中華そば」「他のめん類外食」「すし」「中華食・他の和食」「洋食」「他の主食外食」に分けられました。「他の主食外食」は2000年に「ハンバーガー」と「その他の主食外食」に分けられ現在に至っています。この「その他の主食外食」には牛丼・カレーが含まれているはずで平成以降の外食分野の一翼を担っているジャンルです。
さて、ラーメン2大都市の「その他の主食外食」はどうなっているでしょうか。割合で集計すると全国平均29.69%に対して新潟市は36位の18.66%、そして山形市は最下位の10.02%です。新潟市も決して高くはありませんが、圧倒的ラーメン日本一の山形市が示すこの数字にはちょっと唸ってしまいます。
この支出のバランスについてラーメン支出5位(12,553円)のさいたま市と比較してみるとその加減が際立ちます。まず外食総費用は243,122円と東京都区部に次いで2位となっています。その中でラーメンの支出割合は5.16%(19位)、「他の主食的外食」は29.78%(18位)とほぼ全国平均です。

では山形・新潟市民の外食はラーメンのみに集中しているのかというと少し視点を広げてみる必要があります。前述のとおり、かつて家計調査支出の外食項目は「めん類外食」とそれ以外でした。麺類が現在の「日本そば・うどん」「中華そば」「他の麺類外食」となったのは1995年以降ですが、24年の「日本そば・うどん」について山形市は支出額・割合ともに2位、新潟市は額46位割合34位となっており、前回のブログでも触れたとおり山形市はそば消費も日本一と推測されます。一方「他の麺類外食」については山形市は額14位割合13位、新潟市は額10位、割合2位となっています。新潟の他の麺類とはおそらく「イタリアン」という新潟独自のご当地ファストフードが影響しているのではないか推測されます。「イタリアン」とは中華麺にトマトソースやミートソースなどの具材入りソースをかけた焼きそばのようなもので、県民にはお馴染みのようですが県外民にとっては未知の食べ物といって差支えないでしょう(筆者も未食)。
そこでかつて「めん類外食」でまとめられていた「日本そば・うどん」「中華そば」「他の麺類外食」を合計して集計し直しますと、山形市は額・割合ともに1位、新潟市は額5位、割合2位となります。両市民にとって外食とはまずは麺、ということが根底にあると言えるでしょう。米どころなのに、と思ってしまいそうになりますが、あくまでも外食の傾向ということでご理解ください。

以上の統計的状況から、今後もラーメン消費は山形市と新潟市の二強体制が続き、他市の付け入る隙は当分なさそうであると考えられます。学校給食でもやはり麺類が人気なんでしょうか。