エニイのブログ

祇園精舎のJISの文字は諸行無常の響きあり その1(住所雑学シリーズ15)

2021年3月31日 データマネジメント

祇園といえば、一般的には京都のあの繁華街の祇園のことを指します。地名の由来は八坂神社(通称・祇園社)界隈という意味からです。同様に八坂神社(祇園社)の祭礼だから祇園祭となります。八坂神社が祇園社と呼ばれる由来は祭神が祇園精舎の守護神である牛頭天王(ごずてんのう)だからであり、祇園精舎はインドの…まあ、そこから先は興味ある方はお調べください。平家物語の冒頭でも有名ですね。
すでに話がややこしくなっていますが、今回のテーマは地名の文字問題でもややこしさの三本指に入る祇園の「祇」の字についてです。

「祇」の字、分解すると「示」(しめすへん)に「氏」ですが、偏としての「示」は「ネ(衣)」(ころもへん)と混同されることがあります。「神」「社」などは本来は「示申」「示土」でしたが、今はすっかり「ネ」で定着してしまいました。本来「示」であるものは神事に関わるものがその傾向にあります(祈・祝・祖など)。
この「祇」の字、以前ワープロなどの活字では「ネ氏」で表示されていたことをご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。ところが今このブログでも表示されるのはご覧の通り「祇」ですね。お手持ちの漢和辞典をご覧になってみてください。やはり「祇」で出てくると思います。ところが私の手元にある1998年発行のワープロ辞典をみるとこうなっています。

gi1998
(『【パソコンワープロ】漢字辞典』ナツメ社・1998年8月1日発行より)

「ネ氏」ですね。文字コードを見てみてください。赤字下段がS-JISのコードで「8B5F」とあります。「祇」を選択してご利用のPCのエディタなどにコピペして文字コードを見てみてください(※)。「8B5F」と出ますよね。これはJISコードの文字規格が2004年に改定された際にフォントデザインを印刷標準字体に改められた影響によるものなのです。変更当時は対応しているOS・ソフト・プリンターなどによって違いが出たためちょっとした混乱になりました(※※)。葛飾区の「葛」の変更などが有名です。

詳しくはこちらなどをご参照ください。

JIS2004制定時の変更点

https://www.asahi-net.or.jp/~ax2s-kmtn/ref/jis2000-2004.html

(※)(※※)Mac・iOS標準搭載のヒラギノフォントは今でも「ネ氏」で表示されます。そのため、本ブログではわざわざタグでフォント指定をしています。

元々JISコードの漢字の割当には色々評判の悪い点が多く、この2004年の改変でも微妙な問題がありました。今でこそ我々は文字伝達の殆どを電子機器に頼っていますが、本来手書きの時代が圧倒的に長く、たとえ元の正字とは違っていても異体字(ときには誤字)が次々に現れ、それが定着していってしまった歴史があります。特に固有名詞である地名・人名はその最たるもので、本来の正字とはちょっと違っていても名乗られてしまったら認めざるを得ないのです。京都八坂神社界隈の「祇園」は「祇」の字が正しいのですが、実は「ネ氏」で名乗っている地域も結構存在します。最初にご説明したとおり、八坂神社を総本山として祇園信仰というものが広まった関係上、「祇園」もしくは「祇」の字を地名に使う地域は全国に広まり、そこで異体字で名乗る例が発生するのは当然の成り行きです。

この結果、2004年まで「祇」の字を表示するために外字を使い、「ネ氏」をJIS文字として使用していた場合、設定を逆にしなければならなくなる訳です。当時てんてこ舞いになった方もいらっしゃったはずです。
なんとも奥の深い世界ですが、この文字にまつわる問題はまだまだ序の口で、ここから先さらにややこしくなっていきますが、今回はここまでにしておきます。