エニイのブログ

県をまたぐ市外局番(住所雑学シリーズ6)

2018年10月2日 データマネジメント

こんにちは、K又です。前回、電話局番と地域についてお話しましたが、今回もそのテーマでもう少し掘り下げてみたいと思います。
前回、29のMA(単位料金区域)が県をまたいでいる、と書きましたが、これを市外局番で集約すると27組になります。全部ご紹介していたら延々と終わりませんので、特徴的な県またぎ市外局番を何件かご紹介します。

まず、誰もがすぐに思い浮かぶ県またぎ局番は大阪「06」でしょうか。兵庫県尼崎市の市外局番が「06」ということは有名ですね。ところで、これを総務省の「市外局番の一覧」ではどう規定していると思いますか?普通は「大阪府大阪市、兵庫県尼崎市」とシンプルに考えますよね。ところが「06」のMA大阪(区画番号:363)は次のように規定されています。

大阪府池田市空港、大阪市(東住吉区矢田七丁目及び平野区長吉川辺四丁目を除く。)、門真市(石原町、泉町、一番町、大倉町、垣内町、桑才新町、幸福町、寿町、栄町、小路町、新橋町、末広町、月出町、堂山町、殿島町、中町、浜町、速見町、東田町、深田町、古川町、本町、松生町、松葉町、御堂町、向島町、元町、柳田町及び柳町に限る。)、吹田市、摂津市(北別府町、新在家、正雀、正雀本町、庄屋、千里丘、千里丘新町、千里丘東四丁目及び五丁目、西一津屋、浜町、東正雀、東一津屋、東別府、一津屋、別府、三島、南千里丘並びに南別府町に限る。)、豊中市、東大阪市(旭町、池島町、池之端町、出雲井町、出雲井本町、稲葉、今米、岩田町(三丁目を除く。)、瓜生堂一丁目、加納、上石切町、上四条町、上六万寺町、川中、川田、河内町、神田町、喜里川町、北石切町、北鴻池町、客坊町、日下町、五条町、鴻池町、鴻池徳庵町、鴻池本町、鴻池元町、古箕輪、桜町、四条町、島之内、下六万寺町、昭和町、新池島町、新鴻池町、新町、新庄、末広町、角田、善根寺町、鷹殿町、宝町、立花町、玉串町西、玉串町東、玉串元町、豊浦町、鳥居町、中石切町、中新開、中野、中鴻池町、南荘町、西石切町、西岩田一丁目、西鴻池町、額田町、布市町、箱殿町、花園西町、花園東町、花園本町、東石切町、東鴻池町、東豊浦町、東山町、菱江、菱屋東、瓢箪山町、本庄中一丁目、本町、松原、松原南、水走、南鴻池町、南四条町、箕輪、御幸町、元町、山手町、弥生町、横小路町、横枕、横枕西、横枕南、吉田、吉田本町、吉田下島、吉原、六万寺町及び若草町を除く。)、守口市、八尾市(竹渕、竹渕西及び竹渕東に限る。)、兵庫県尼崎市

最後に「兵庫県尼崎市」と書いてありますが、大阪府内の区域が長々と細かく規定されているのが特徴的です。私も含めた非関西圏の人間は何となく「06」=大阪市とイメージしてしまいがちですが、大阪市でもごく一部が「06」でなかったり、大阪市以外にも「06」地域があるんだな、と気付かされます。
門真市摂津市東大阪市などにおいて町域名が延々と書かれていますが、これは市内で他の局番とでほぼ二分されているためです。この二分されている相手の局番は「072」で、東大阪市においては同じ市外局番「072」でもMAが寝屋川(区画番号:364)と八尾(区画番号:372)とでさらに分かれており、東大阪市の「072」地域の方は同じ市内でも市内通話ができない相手の方が多い、という状況にあります。
因みに東大阪市の説明表記で注意していただきたいのが、延々と町域名を列挙した上で「~を除く」と〆られている点です。つまり、ここで挙げたものは他のMA(寝屋川・八尾)のものであって、これらを除いた他の町域がMA大阪だよ、と言っている訳です。具体的にはどこ?という疑問に対しては、地図か町域の一覧の地名を塗りつぶして当てはまらなかったものをピックアップする必要があります。「~を除く」表現は要注意です。
市外局番「072」は兵庫県の一部(伊丹市、川西市、宝塚市の一部、川辺郡)でも使用されているなど、何となくな地域イメージはできても文字面で規定するとどうしてもこのように複雑な表現になってしまいます。
電話の通信網と行政区の単位は必ずしも一致しないことが都市部ではこのような現象となって現れがちです。

次に地方の山奥で県をまたぐ局番の例を見てみましょう。
市外局番「0573」はMA中津川(区画番号:316)で使われていますが、その範囲は「岐阜県中津川市(蛭川を除く。)、長野県木曽郡南木曽町田立」となっています。一見、長野のほんの一区画が岐阜のMA中津川に含まれているだけのように見えますが、実は以前は村一つ分越境していたのです。
どういうことかといいますと、かつて中津川市と木曽川を挟んだ場所に位置し、旧中山道の馬籠宿であった場所は長野県に属していました。しかし生活圏としては中津川市側と親和性が高かったため、1957年に当時属していた神坂村が中津川市との越県合併を決めたのです。中津川市議会、岐阜県議会もこれを認めました。
ところがこれに長野県議会が待ったをかけました。長野県を代表する作家・島崎藤村の生誕地である馬籠宿を他県に渡す訳にいかない、という理由で。藤村の生誕地であるということは同時に『夜明け前』の舞台であることもあり、長野県議会は絶対に譲らない姿勢を取りました。
最後は政府の裁定を仰ぐこととなり、神坂村の中で馬籠を含む3集落は長野残留ということになり、山口村として分裂してしまったのです。その後合併反対派と賛成派とで村内に大きな遺恨が残ってしまいました。
しかし半世紀経った2005年にようやく越県合併が認められ、山口村は中津川市に合併されたのでした。因みに山口村時代までの馬籠地区は「山口村神坂」という名称だったのですが、この合併の際に「中津川市馬籠」と歴史的名称に改められました。
単位料金区域は単に通信網の都合というだけでなく、行政区単位よりも地域の活動に根ざしている場合も少なくない、と言えるのかもしれません。

最後にちょっとあれ?という市外局番について見てみましょう。
2組あるMA小田原のうち区画番号「235」の方の市外局番は「0460」、その範囲は「神奈川県足柄下郡箱根町、静岡県裾野市茶畑」となっています。
この市外局番「0460」はかつてあることで有名でした。現在、日本の固定電話の番号は全て10桁ですが、9桁の地域があったのをご記憶でしょうか。最も分かりやすいのは東京「03」大阪「06」で、「03」は1991年、「06」は1999年に番号逼迫解消のために10桁になりました。その電話番号9桁が最後まで残っていたのがこの市外局番「0460」の区域でした(2007年に10桁化)。
主に箱根町で使われている番号ですが、「静岡県裾野市茶畑」という例外があります。ということは、一方で「裾野市(茶畑を除く)」という規定があるはずですが、これはMA沼津(区画番号:300、市外局番:055)にあります。つまり、静岡県裾野市の市外局番は基本的には「055」ですが、「茶畑」だけは「0460」ということになっています。
この「茶畑」とはどういう地域なのでしょうか。地図でみるとこうなります
東はJR裾野駅前から始まって西は県境ともなる芦ノ湖スカイラインまでが範囲となっています。なるほど芦ノ湖寄りの部分が箱根町側の通信網に入るのは分かりますが、山を越えて裾野市の市街地である駅前までがその影響下に入るということはありうるのでしょうか。
試しにリンク先の地図の駅前の市街地側を拡大して、どれでもいいのでお店や公共施設の部分をクリックしてみてください。出てくる情報の住所は「静岡県裾野市茶畑」ですが、電話番号の市外局番は「055」ですよね。当然といえば当然ですが、「茶畑」の地域で市外局番「0460」なのは芦ノ湖スカイライン沿いの施設などだけで、基本的に市街地は「055」なのです。
しかし、総務省の「市外局番の一覧」では「静岡県裾野市茶畑」は「0460」と規定されてしまっています。本当は「静岡県裾野市茶畑の一部」とすべきところですが、そういう表現を取っていません。総務省もこのことを把握していないはずはないので、決められたルールに則って表現するとこうなる、ということなのでしょう。正直、この辺は何とも言い難く、混在している、ということだけは確実に言えます。

今回は重箱の隅をつつくようなお話が続きましたが、これら電話局番と地域の関係は、データとして向き合う際にはなかなか侮れない重要な問題の一つになります。